がん遺伝子治療とは、がん細胞に正常ながん抑制遺伝子を導入することよって、がんの増殖を止め、アポトーシス(自然な細胞死)に導く、がんの先端的治療です。がんの「増殖」や「不死」の原因となる遺伝子に直接アプローチする治療法であることから「ステージ」や「転移」「再発」など、病期を問わず治療が可能です。また、副作用がとても少なく、副作用が起きても軽いことから治療に対して苦痛を伴わず、体力の衰えた末期がんの方でも治療を受けることができます。
がん細胞の多くはがん抑制遺伝子が欠落しているか、正常の機能をはたさなくなっています。がん遺伝子治療はがん抑制遺伝子やマイクロRNA抑制タンパクを体内に導入することにより、がん細胞の増殖を止め、自然な細胞死を迎えるように誘導する治療です。

●がん遺伝子の種類

TRAIL【がんを選択的に攻撃】
TRAILは、TNF(tumor necrosis factor; 腫瘍壊死因子)ファミリーに属する免疫システムのサイトカイン伝達物質です。がん細胞の表面に存在する受容体(デスレセプター)への特異的な結合を介してアポトーシス誘導シグナルを細胞内に伝達し、周囲の正常組織に影響を与えずにがん細胞に対して選択的に攻撃できるといわれています。炎症を引き起こして腫瘍原性(発がん能)を抑制したり、アポトーシスのプロセスを促進します。

PTEN【アポトーシスを制御役】
PTENは、アポトーシスの抑制や細胞増殖など、細胞の生存シグナルにおいて重要な役割を果たしているがん原遺伝子のAKTの働きを制御します。そのため、PTENに変異が起こると、AKTの働きを制御することができなくなり、AKTが不要に活性化することでアポトーシスの抑制や細胞増殖などの影響が発生します。PTENは、多くのがんで高頻度に変異や欠損が認められるがん抑制遺伝子です。

cdc6shRNA【細胞の増殖を不活性化】
cdc6(cell division cycle 6)は、細胞を増殖させるために働くタンパク質で、細胞周期の調節因子の一つです。通常は細胞周期の初期(G1期)にのみ少量発現されるのに対して、多くのがん細胞では全周期(G1、S、G2、M期)において大量に発現しています。cdc6の過剰な発現により、がん細胞は分裂をコントロールできなくなり無限に増殖します。さらに、がん抑制遺伝子の機能も抑えられ、がんの進行につながっています。cdc6shRNAは、がん細胞中のcdc6の発現を阻害することで、がん細胞の増殖停止や、細胞のアポトーシス(自死)へと誘導します。

p16【細胞の問題に適切な初期対応】
p16は、細胞周期をG1期で停止させ、細胞老化を誘導します。細胞老化とは、細胞の異常な増殖を防ぎ、発がんを予防する生体防御機構です。正常な細胞ではp16はほとんど機能していません。しかし、細胞が限界まで分裂した場合や、様々な発がんストレスにさらされた場合は、p16の発現が著しく上昇します。多くのがん細胞において、p16の変異や活性の停止がみられます。そのため細胞の増殖を抑制できず、がんが促進されてしまいます。

p53【遺伝子の司令塔】
p53は、細胞がストレスやDNA損傷などの「危険信号」を察知すると活性化するがん抑制遺伝子です。がんを防ぐためにその他の様々な遺伝子に命令を出す司令塔の役割をするのでゲノムの守護者とも呼ばれます。DNAの傷を認識した場合、傷を修復させたり、損傷の多い細胞にはアポトーシス(自死)させることで、がん化する前に細胞を消し去ります。また、細胞周期のG1期→S期に進める遺伝子に働きか過剰な細胞増殖を止めることでがんを抑制します。

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